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NHK ノーベル平和賞コンサート

2011/01/07 01:33

 

 日、NHK BS2でノーベル平和賞コンサートを、番組の途中からなんともなしに観ていた。

ハービーハンコックがイマジンなどを演奏し、なかなかいいね、とグラミー賞と同じような気分で楽しむ。

司会のデンゼルワシントンとアンハサウェイを含めて、出演がアメリカ人主体のように思えたので、オバマ大統領受賞のコンサートかと思ったが、劉暁波氏の名前がよく出てくる。すると2010年のものらしい。

 

司会のデンゼルワシントンは大変にきびしい表情でしゃべっている。そろそろエンディングスピーチである。

そのスピーチの字幕で「自由と民主化が進まない、、、」と出たので、世界の国々はまだその途上にあるのかなあ、日本もそうかなあ、と大きな優しい気持ちでやや違和感を覚えつつ視聴する。

すると、字幕よりもやや遅れたデンゼルワシントンの英語の声は「中国の、自由と民主化が、、、」と云っている。

 

なんだ、具体的に中国共産党劉暁波氏へのひどい態度と、民主化が進まない中華人民共和国の現実への抗議ではないか。コンサート全体がそのコンセプトでつくられているのだろう。

世界の民主化が進まないなどと、日本語字幕から読み取った自虐的な自分があほらしい。

 

字幕に「中国」と入れるか入れないかで、メッセージは全く変わってしまうではないか。

 

これを仮に中共の諜報活動の一環だとすれば、なかなか効果の高い手法ですな。

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中国人に押されたら、淡々と押し返せ。

2010/10/08 00:34

 

日本で 旅客機や鉄道に乗ると肘掛けの陣取り合戦が始まることがあります。あの肘掛けは5センチくらいの幅しかなく、自分の肘をのせると隣人には圧迫感が発生して、迷惑だろうと考えます。それで肘をのせずに控えておりますと、しかし隣人に肘をおかれたりして損をした気分にもなります。こちらもわざと肘をあててみたりして、自己主張をしてみる。

我ながら狭小なこころもちです。

結論としては、あの狭い肘掛けの中央にとうめいなバリアを作り、その結界を侵さないように適当にすごす旅の空です。

 

さて中国の隣人はもっと大胆に結界をおかしてきます。侵犯する部位は肘というよりは膝と腿が多いようです。つまり下半身をどんどんぶつけてくる。20センチくらいは攻めてきます。

こちらはとうめいなバリアを立てて、お互いの個人的な空間を確保しているつもりなのに何故そんなに空間を押してくるのか。他人を慮ることはないのか。

貧乏ゆすりもやめろ。

かってに憤る自分がいます。

 

こういうときは内にこもらずに、自分の腿でぐっと押し返すといい。隣人の下半身はすっと反対側に引いていきます。

そのうちにまた侵犯してきたら、また淡々と押し返す。

 

押したり引いたり、ふっかけたり値切ったり、中国人はそういうライフスタイルなんでしょう。多分5000年かけて熟成した生き方、考え方。

 

それにいちいち感情的な対処をすると、心が保てません。押されたら押し返せばいいだけです。

 

尖閣の騒ぎを観ていて、中国人のことを懐かしく思い出しました。

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チャイナリテラシー 外来語の章

2009/06/24 23:37

 

中国では「Coca cola」のことを「可口可楽」と表記し、「クーコゥクーラー」と発音する。自動車メーカーのAudiは奥迪、「オーディー」と呼ばれる。


中国語にはひらがなカタカナのような表音文字がないので外国語を表記するときにはその音を適当に置き換えた漢字を使う。
その漢字の発音はもちろん漢語固有の独特のものであるし、それぞれの字に四声と云う上げ下げの声調があるため単純に音訳するのも楽ではなさそうだ。


たとえば上記のCoca ColaやAudiはうまく音訳できているほうであるが、同じコカコーラでもSpriteは「雪碧(シュエビー)」となっている。音訳なのかイメージ訳なのか、ずいぶんクリエイティブだ。
おそらくSpriteを素直に音訳すると「色葡来特(スープゥライトゥ)」みたいな長いネーミングになり、清涼飲料水に似合わなかったんだろう。そうかと思うとヒップホップグループのthe BLACK EYED PEASは「黒眼豆豆」だったりする。直球の直訳だ。これはこれで。


日本の固有名詞はさらにややこしい。自動車会社の日産は漢語では「リーチャン」と発音するのだがローマ字のNISSANに対しては「尼桑(ニーサン)」と書いてあったりする。

日系の会社で中国でのブランドやマーケティングを担当する方々はすっきりしないまま日々を暮らしているのではなかろうか。

 

というふうに中国語の中の外国語は面白い世界だ。しかし我田引水の強引さを感じないでもない。
特に便利なカタカナを持つ日本人は、原語から勝手に変えるなよと中国人に云いたくもなる。中華思想だなとも思う。

 

と考えているうちに日本語の中のカタカナはいっけん原語に忠実に見えて、実は相当に日本語のペースに変換していることに気づいた。

どういうことかといえば、生の英語を日本語文に混ぜてみると会話が続かないことがわかるだろう。たとえば「APPLEの新しいiPodはいいね」は「ェアポゥ、の新しい、アイパァードォ、はいいね。」みたいな発音とイントネーションになり、英単語の前後でリズムが途切れるはずだ。
おそらく英語の会話の中にフランス語を混ぜても同様だろう。


というわけで中国人の特色ある外国語のさばき方からカタカナ英語を見直してみた。日本語をしゃべって暮らしている分には現在のカタカナ英語はいいものだと思った。

しかしR音とL音は同じラ行なので英語を書くときにどっちだったか迷ってしまう。RとLでカタカナの表記を変えられるとさらに便利なのだけれども。


さて、この視点は「酷(クー)」だっただろうか。酷とはもちろんcoolのことだ。

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脳にはもう厭きました。

2009/06/15 23:59

 

木村拓哉主演の「MR.BRAIN」をみてみた。軽い刑事物はそれはそれで悪くない。アメリカの「CSI:科学捜査班」みたいなリアルな映像のドラマは、バジェットも含めて期待の外でもある。

天海祐希の「BOSS」がCSI風味だったので「MR.BRAIN」は「クリミナルマインドFBI行動分析課」方面から攻めるのかなと思っていた。

 

しかし謎解き解説場面で「ためしてガッテン」みたいなとんでもない極彩色のCG画面が出てきた。一生懸命ドラマを追っていた気持ちがはがれてしまう色彩だ。

こういう展開を脳はどう受け止めるのか。なんてな。

 

ちかごろは何でも脳の所為にするけれども、私の脳はもう厭きたみたいだ。

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チャイナリテラシー 阿Qの章

2009/06/15 23:21

 

中国人を知りたければ魯迅の「阿Q正伝」を読めばいい。
しかし中国を知らずに「阿Q」を読んでも、たぶん何も読み取れないとも思う。

 

この本は高校時代に初めて読んだ。岩波文庫の古い小さなフォントが、よその国の古典を無理して読んでいる疎外感を強調していた。作品の印象はあまり残っていない。幻想小説のように現実感のない何かの寓話と思ったのではないか。

 

それから大学生の頃、社会人になってからと何回か読んでいる。収録されていたはずの「狂人日記」なども読んだはずなのだがさっぱりだ。

 

やがて中国に暮らすことになり再々読した。ちょうど中国人の面子の解説書を読んだばかりだったので、阿Qのどうしようもない面子のことを書いているのかと少しだけ物語に入ることができた。

 

さて中国暮らしも半年ほど過ぎ、中国と中国人がわかってきた頃にまた読んでみた。
今まで私はこの本の何を読んでいたのだろうかと思った。ファンタジーだと思っていた物語は魯迅による中国と中国人の写実描写だとわかった。

 

いまなら新書で「面子に滅びる中国人ー阿Qと呼ばれた男ー」とでも改題すればベストセラーになるかもしれない。

 

さて上海にも首都高速のような高架路がある。朝夕のラッシュ時は、いや一日中、渋滞している。どの車も1センチでも前に行こうとして無意味な車線変更を繰り返している。誰も自分の車線を譲らない。

しかし油断をした隙に右から鼻を突っ込まれて進路を取られでもすると、「おれはもともと左に行くつもりだった。車線を盗られた訳ではない。」とでもいうように無駄に左に逃げていく。


どうあがいてもどの車線も渋滞しているのだから、どの道を進もうがどうせさして変わらないのだが。
すべてが無駄だ。
しかしそこここに小さな面子が立っているのが見える。「俺は俺の車線をたしかに守ったのだ。」と。

 

こういうのを「精神的勝利法」と魯迅は呼んだ。中国ではいまだ健在なライフスタイルである。

 

我也是阿Q。私もまた阿Q。

 

上海人のディーさんに中国で阿Qはなんと発音するのか聞いてみた。
中国語の発音記号ではQは「チ」音になる。しかし「キュー」でいいという。中国でも阿Qは阿Qだという。
ならば、Qはどういう意味かと訊いた。
「チェンさん、知らないんですか。Qは清国の辮髪ですよ。べんぱつ。辮髪の頭を横からみたらQの字になるじゃありませんか。ほほほ。」
そういって艶やかに笑うディーさんであった。   

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中国コレオイシイヨ 黄色いスープ

2009/06/11 00:22

 

中国を訪れたなら黄色いスープをためしてほしい。
ただただおいしい。

 

見た目はコーンポタージュを想像いただけるとよいと思う。ちょっと深みのある、しかし鮮やかな黄色が豪華だ。
そうだ中国では黄色は豪華を象徴する色だ。清国皇帝のコスチュームが黄色だった。

 

味はとにかくもう濃厚なうまみだ。どういう方向性かといわれてもよく思いだせない。味の素のような純粋なうまみなのかもしれない。佛跳牆(フオティアオチアン)に似てないこともない。いろいろな材料からとったと思われる味が渾然としている。


コラーゲンが多いのか、口がねっとりするが、糊のように貼りつくようなこともなく品がいい。

 

この黄色いスープはどちらかといえば宮廷料理的な出自なのだろうか、安い食堂にはない。
ちょっと高めの店に行ったときはメニューにさがしてみるが、よく考えたら名前を知らない。

 

中国の高級な湯といえば、金華火腿(ハム)、干ししいたけ、干し蝦、干し貝柱、などを煮込むのだろうし、朝鮮人参や冬虫夏草を入れれば薬膳方面で付加価値がつく。
しかし我が黄色いスープはどうも基本的に具がなく、そのため正体が知れない。

 

さて北京の天安門広場から長安街を東に進みちょっとさみしくなる秀水のあたりに「那家小館」という老北京風情の流行りのレストランがある。この店のメニューにも黄色いスープがあって五種類くらいの具が選べた。鹿肉、鹿の腱、キノコ、、たしか素のスープもあった気がする。
やはり具とスープに密接な結びつきがない。

 

「那家小館」では具を食べたあとのスープにご飯を入れておじやのように食べさせている。これがまたおいしい。
多分、ラーメンにしたらすごいのができそうな気がする。ぜひ食べたい。

 

そういうわけで上海の会社で「黄色いスープが食べたい。食べたい。たべたい。」と言っていたら、近くの南金西路にある「譚氏官府菜」という北京宮廷料理のレストランで昼食会をセットしてくれた。
黄色いスープは「譚氏官府菜」の看板料理のはずだ。


もちろんオーダーする。

店員が運んできたスープを前にして。
「これ、これ。これが黄色いスープですよ。おいしそうでしょう。」
「あー。チェンさんが言ってた黄色いスープってこれですか。へえ。」
「そうです、ところでなんという名前ですか。」
「さあ、何でしょう。」

 

だから中国人が好きだ。

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チャイナリテラシー 礼の国の核実験の章

2009/06/09 00:22

 

朝鮮民主主義人民共和国の核実験やミサイル発射のデモンストレーションにたいして、中華人民共和国があれだけ面子をつぶされながら今ひとつ煮え切らない。あれはなんだろうかと考えている。

 

もちろん地勢的に自由主義国大韓民国中国を隔てる心地よいクッションとしての北朝鮮。

 

ソビエト連邦における東欧諸国がそういう役だったらしい。ロシアにかわった今でも同じコンセプトを発信している。自国の周りにバッファーを確保したいのは共産主義国の癖なのか、それとも中華の性格なのか。

 

そういうふうに中国地図を見ると国境周縁の省はもともと漢民族が住む場所ではなかったみたいだ。
西のチベット自治区から北のほうに続く青海省や新疆ウイグル自治区は回族やトルコ系の少数民族の場所だろうし、さら東北の縁をモンゴル人の内蒙古でおさえつつ満州族の東北三省で締めくくる。そこで中国は終わり件の朝鮮半島に行き当たる。


朝鮮から南に下る沿海州は海に隔てられているのでよし、とする。しかし福建省の対岸に迫る台湾と沖縄は中国に入れておきたいところだろう。


ベトナムラオスミャンマーと接する南端の広西はチワン族自治区であるし隣接する雲南省や貴州も少数民族が多いようだ。

結局、漢族のハートランドの周りは少数民族で環状にぐるっと固めている。

コンセプトの長城なのだろうか。


こういう壮大なスケールの自閉症的な大陸国家意識は、島国根性の国民の肌では理解できないなあ。

 

少数民族の扱いについて、新疆ウィグル自治区の青年は言っていた。
「わたしの親は上海人です。若い頃に政府の命令でウィグルに移住させられました。だから私は漢族です。」
中国の身分証明書には民族名が明記されている。それを見せてくれた。
「新疆ウィグルのトップは少数民族代表のウィグル人が務めます。でも有力なウィグル人は北京か上海の大学の少数民族コースに進み、ちゃんと漢人のように教化されます。そういうことを続けているので最近ではウィグルの若い人たちはウィグル語をまともに読み書きできなくなってますよ。」
ウィグル語の見た目の印象はアラビア文字であり漢語とはまったく異なる。

 

そんなことを見聞きして漢族と少数民族の感覚がぼんやりとつかめたある日、中国語の先生とチベット問題の話になった。老師は日本帰りの上海人であり、フランクに話が出来る間柄だ。
「でもねチェンさん、中国政府はチベットを手放すことはないですよ。あそこにはすごい資源がありますからね。」
ふと思いついて私がこたえる。
「そういうのっていわゆる植民地って言うんじゃないですか。世界一般的には。」
わが老師は言葉につまり、すこしの沈黙のあとに云った。
「あ、そんなふうに云われたのは初めてです。それはそうかもしれません。でもしかし手放さないでしょう。」

 

北朝鮮の核をあんまり非難しない中国は、自分の周囲に隙間なく配置したフカフカクッションをそのままにしておきたいということなんだろうか。


そういえば思い出した。1964年の10月16日に中国が初の核実験を行ったことだ。ちょうど日本が10月10日に開幕した東京オリンピックに浮かれていた、その気分に泥水をかぶせたという。

 

かつての朝貢国は宗主国に範をとった立派な儒教の礼に従っているのかもしれないなあ。こっちの理由かな。

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チャイナリテラシー デザインの中間省略の章

2009/06/05 23:32

 

中国が「発展の中間省略」を経てここまできたことと、その経済や社会への影響などはいろいろ論じられている、と思う。

 

発展の中間省略というのは、たとえば東南アジアなどの途上国で固定電話が普及する前に、インフラコストの安い携帯電話のほうが広まってしまったこととか。

日本もむかしは欧米からみれば中間省略の国だったのだろう。しかし明治維新が欧米の近代工業化に追いつけるぎりぎりのタイミングだったのはよかった。おかげで今の生活をとりまいている事物については日本が発展の主役のひとりになっている。

 

こうして、一歩一歩切磋琢磨しながら技術革新を進めてきた先進工業国から見ると、進歩のプロセスの途中がスポっと抜けていきなり最新版を手にするひとびとに何か忠告してみたくなる。
何が問題なのかはよくわからないけどね。

 

デザインにも発展の中間省略の密かな問題があり、中国やほかの途上国とつきあう上では一度考えておくべき話だ。

 

たとえばMINIという車がある。いまはBMW傘下でレトロデザインのコンパクトカーとしてよく売れている。このクルマが1959年デビューのオースティン/モーリスMINIをオリジナルとしていることは、知られていることだろう。日本ではいまだに古いMINIを転がすマニアは多い。

 

中国でもBMWのMINIは人気があり、上海では金持ちの女がよく乗っている。しかし中国には古いMINIはない。そこのところは中間省略されている。
そうしてオリジナルのMINIを経験していない中国人にとってのBMW MINIは「レトロなしのモダン」デザインに映るらしいのだ。
だから同じように売れていて人気のあるデザインだとしてもその意味は違っている。

 

デザインをする立場の中国人も中間省略されて育っている。そこは弱点にもなるだろうけれど、だからこそ出来ることもあるだろう。物を知らない強さや勢いがあるからね。
ただ、ひとついえるのはデザインセンスの基礎材料が違うということで、価値観のどこかが決定的に食い違っているかもしれないということだ。

 

改革解放経済発展に乗り遅れたある地方出身の新入社員はいつも同じ服を着ていた。あるとき同僚の女子がショップに連れて行き、よってたかってドレスアップ作戦をしたことがあった。翌日その成果のファッションで出社した彼の胸にはGAの文字が刺繍された鷲のマークがついていた。

もちろんアルマーニのコピー品だ。
「お、アルマーニじゃないか。おしゃれだねえ。」
「え。この鷲のマークに何か意味があるんですか。なんかかっこいいデザインですが。」
こういうふうなレベルでかみ合わない。彼の生い立ちからすれば思春期のおしゃれ発展プロセスにブランドの要素が抜け落ちている。

 

デザインにおける発展の中間省略の問題はこうして密やかにスタートする。
成澤岳彦

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チャイナリテラシー 民主主義の章

2009/06/04 23:56

 

中国には選挙がない。ゆえに民主化もない。

 

大正時代から普通選挙法があった国の人には、中国のリアルは想像出来ないように思う。また逆に選挙のない国の人には民主化という状態もわからないと思う。

 

今日のニュースで日本のアナウンサーがこわい顔で言っていた。

天安門事件から20年、中国ではいまだに当時のことを公表していません。真の民主化のためには都合の悪いことも公にする必要があることをわからなければならないと思います。」

 

このアナウンサー氏の認識では中国はもうすこしで真の民主化が達成できそうだと思っておられるのだろうか。

と、めずらしく腹が立つのは、上海である瞬間に、自分にとっては決定的瞬間にでくわしたからだ。

 

2007年の秋だった。

その日はめずらしく雑誌の取材やイベントの仕事が集中し、週末なのに同僚と上海市内を駆け回っていた。

仕事も終わりもう夕方になっていただろうか、会社のミニバンで帰路の高速道路を走っていた。

 

車中では運転手のワイさんやOLのディさんと、いつものように馬鹿話を楽しんでいた。

 

ふと気づくと二人が黙り込んでいた。

「ん、どうかしたの。」

「チェンさん、ちょっとわるいけど。いま大事なところ。」

と車のラジオのボリュームを上げて、熱心に聴いている。

とてもそわそわして、一言も聞き漏らすまいとしているようにみえる。

 

だれかが演説しているようだ。

 

「チェンさん、いま新しい上海の党書記が挨拶しています。兪なんとかといっています。知らないなあ。」

上海市党大会か何かの中継放送らしい。その人は湖北省から上海のトップに移動してきたようだ。ふたりとも誰だかわからないという。

 

そう。中国ではおのれの市のトップがある日突然どこかから降りてくることになっているのだ。そしてその正体を人民はすぐには知る由もない。

これは何なのだろう。民主化が進んだとか後退したとか、そういう次元ではない。

 

上海では経済発展とともにいたトップの陳良宇氏が汚職で捕まり、習近平氏がその跡を継いだが1年を待たずに中央へ栄転した。その後任がこの兪正声氏なのだ。

上海市のトップとは党中央へ有力なステップになると思われている。事実、上海トップを経て主席となった江沢民氏は典型であろう。

 

そういったダイナミックな共産党の人事が頭の上を通り過ぎていくのを、上海市民はどういう想いで看ているのだろう。

 

少なくとも最終的に選挙で意思表明が出来る日本人とはまったく異なる視線のはずだ。

 

その週明けの月曜、会社でとっている読売新聞に兪正声氏の紹介があった。中国人の同僚はその記事にとびつく。

少なくとも月曜の中国国内では兪氏はまだ謎の人物のままだった。日本の新聞のほうが早く記事にしていたわけだ。

 

ところで中国の自治体の最も下の単位では選挙制が導入されていると宣伝されている。上海人にどういうものか聞いてみたら、ひとつのポストにひとりの立候補者がいて、その名前しか書いてはならず、全員必ず投票せねばならない。投票しないと町内会の人がしつこく勧誘するらしい。

会社の組合の選挙とそっくりだ。

 

私はそれを選挙とは呼ばない。

成澤岳彦

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中国コレオイシイヨ 北京の麻豆腐

2009/06/04 00:27

 

北京に行ったときは麻豆腐を作ってくれる店をさがす。四川の麻婆豆腐とはまったく別物だ。古い北京っ子の料理なので知らない人も多い。

 

上海人に話すと

「北京で麻婆豆腐食べたんですか。あれは四川料理ですよ。え、マードウフ。麻豆腐。ああ、あ、なんかそれは聞いたことがある。いったいなんですか。」

くらいの答えが期待できる。そんなものだ。

 

最初に食べたのは天安門広場を南に下がった古い胡同の一角で偶然はいった食堂でだった。

 

チャコール色のレンガを背景に金色の「天海」という浮き文字が大きく古ぼけて光っている。

メニューから水餃子とビールはすぐに選んだ。もう一品を麻豆腐にした。

なぜ知りもしない麻豆腐を嗅当てたかはよくわからない。メニューに並ぶ見慣れない料理の中でマードウフと発音できる簡単な漢字の組み合わせだったからかもしれない。

 

その料理は豆腐をぐちゃぐちゃにつぶして炒めたものに見えた。

しかし豆腐の白さはなく中明度の灰色だった。緑の香菜と赤い唐辛子がたっぷりとのっている。

 

しぶいような酸味と獣脂のにおいのはじめての味だった。

 

自分には、こういった未知のものを喰ったときに既知の材料で再現できないか空想する癖がある。

 

まず水気を切った固い豆腐を崩しながら豆もやしを入れて香菜と唐辛子とバターで炒める。近いんではないか。いやあの酸っぱさがわからない。酢ではないしヨーグルトに近いか。しかしあのグレーはどこから来てるんだ。墨汁でも入れるか。

 

それからしばらくして北京っ子の知人と残業の帰りに深夜営業の料理屋にはいった。その店の菜単に麻豆腐がのっていた。

「チェンさん、麻豆腐のこと、よく知ってますね。最近は珍しくなったんですよ。

北京人は緑豆を絞った豆乳をよく飲んでいたもんです。そのおからを発酵させたのが麻豆腐のもとになります。

もしよければ脂は羊のものにしましょう。

北京では豚より羊ですから。」

 

あの酸味は発酵食品のものだったらしい。緑豆のおからを発酵させたもの。これはなかなか入手できそうにない。

北京人の食が変われば麻豆腐も消えていくのだろうか。

 

去年、北京を訪れたときに天海をさがした。しかしあの懐かしい胡同界隈は北京五輪前の狂騒的な都市改造の渦中にあった。地区全体がわけのわからないテーマパーク風の看板で寸断されている。

どう回ってみても行き着けない。店をたたんだのだろうか。

 

気を取り直して、地元で最も人気のある北京ダック店「大董烤鴨」を予約した。ここの北京ダックや海鼠は最高なんだが、意外にもモダンな新作中華もおいしい。

そのメニューに麻豆腐を見つけた。

カクテルグラスに刻んだトマトを散らしてスタイリッシュに盛っている。しかし味はしっかりと老北京のままだ。

 

こういう古い料理を拾ってくる大董があるから、北京が好きだ。

 

成澤岳彦

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