中国には選挙がない。ゆえに民主化もない。
大正時代から普通選挙法があった国の人には、中国のリアルは想像出来ないように思う。また逆に選挙のない国の人には民主化という状態もわからないと思う。
今日のニュースで日本のアナウンサーがこわい顔で言っていた。
「天安門事件から20年、中国ではいまだに当時のことを公表していません。真の民主化のためには都合の悪いことも公にする必要があることをわからなければならないと思います。」
このアナウンサー氏の認識では中国はもうすこしで真の民主化が達成できそうだと思っておられるのだろうか。
と、めずらしく腹が立つのは、上海である瞬間に、自分にとっては決定的瞬間にでくわしたからだ。
2007年の秋だった。
その日はめずらしく雑誌の取材やイベントの仕事が集中し、週末なのに同僚と上海市内を駆け回っていた。
仕事も終わりもう夕方になっていただろうか、会社のミニバンで帰路の高速道路を走っていた。
車中では運転手のワイさんやOLのディさんと、いつものように馬鹿話を楽しんでいた。
ふと気づくと二人が黙り込んでいた。
「ん、どうかしたの。」
「チェンさん、ちょっとわるいけど。いま大事なところ。」
と車のラジオのボリュームを上げて、熱心に聴いている。
とてもそわそわして、一言も聞き漏らすまいとしているようにみえる。
だれかが演説しているようだ。
「チェンさん、いま新しい上海の党書記が挨拶しています。兪なんとかといっています。知らないなあ。」
上海市党大会か何かの中継放送らしい。その人は湖北省から上海のトップに移動してきたようだ。ふたりとも誰だかわからないという。
そう。中国ではおのれの市のトップがある日突然どこかから降りてくることになっているのだ。そしてその正体を人民はすぐには知る由もない。
これは何なのだろう。民主化が進んだとか後退したとか、そういう次元ではない。
上海では経済発展とともにいたトップの陳良宇氏が汚職で捕まり、習近平氏がその跡を継いだが1年を待たずに中央へ栄転した。その後任がこの兪正声氏なのだ。
上海市のトップとは党中央へ有力なステップになると思われている。事実、上海トップを経て主席となった江沢民氏は典型であろう。
そういったダイナミックな共産党の人事が頭の上を通り過ぎていくのを、上海市民はどういう想いで看ているのだろう。
少なくとも最終的に選挙で意思表明が出来る日本人とはまったく異なる視線のはずだ。
その週明けの月曜、会社でとっている読売新聞に兪正声氏の紹介があった。中国人の同僚はその記事にとびつく。
少なくとも月曜の中国国内では兪氏はまだ謎の人物のままだった。日本の新聞のほうが早く記事にしていたわけだ。
ところで中国の自治体の最も下の単位では選挙制が導入されていると宣伝されている。上海人にどういうものか聞いてみたら、ひとつのポストにひとりの立候補者がいて、その名前しか書いてはならず、全員必ず投票せねばならない。投票しないと町内会の人がしつこく勧誘するらしい。
会社の組合の選挙とそっくりだ。
私はそれを選挙とは呼ばない。
成澤岳彦
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by チェンズー
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